みのる:日本の伝統的な花といえば、菊を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。手をかければかけるほど美しい花を咲かせるとも言われており、特に大輪の菊の栽培は非常に難しく専門的な知識を要します。格調高い本格的な野外菊花展では葭簀籬に紋幕を張り巡らします。立派な賞の菊がたち並んでいる様子が連想できます。

えいいち:紫の紋幕が連なっているのでかなり大きな格式のある菊花展なのだと思います。美しい様々な菊花に期待に胸を膨らませ来場した作者の様子を強く感じます。

澄子:紋幕には元々神域と俗世を隔てる境界の役割意味があるようです。神社の紋の入った紋幕を想像しました。明治神宮や新宿御苑などで開催される菊花展では雨よけ風よけのための菊の家の上部に紫の紋幕が張られそれらが長々と連なってゆきます 紋幕の紫の色が連なる様は 菊花展に統一感を与え、その中に置かれた菊も見事なまでに幾何学的な造形でその整然とした雰囲気には 清々しさを越えて圧倒されるようです。花の色は圧倒的に白 黄色が多いように思います。

かえる:実際に菊花展に出向いたことはないのですが、紫の紋幕を連ねているので、会場は神社なのではないかと思います。毎年これを楽しみに訪れる人でさぞかし賑わっているのでしょうね。名人たちが丹精を込めて育てた自信作が立ち並ぶ様は圧巻。審査員になったかのように、ご家族や友人と意見を交わしながらのそぞろ歩き。菊はもちろん、紋幕が風に揺れる様も美しく。おしゃべりも満喫。秋の楽しみを凝縮したような一日への、作者の深い満足を感じます。

康子:最近は菊も品種改良されさまざまな種類があるようで、色もとりどりです。菊花展ではドーム型にしたり滝の流れるような形にしたり創意工夫されています。その菊の鮮やかさと紋幕の紫…その対比が美しいです。「紫の紋幕」により格式高い催しと分かり、そして「つらね」により大きな境内の大規模な菊花展が想像できます。菊の香りに包まれて見切れない位の会場を楽しそうに歩いている作者が浮かびます。色や香りを存分に感じる句でした。

むべ:菊花展は全国ワイドで開催される秋の菊の品評会。私は近所の小規模な会場しか行ったことがありませんが、九州の大宰府天満宮では例年11月に奉納展示され40万人もの参拝者が訪れる一大イベントなのだそうです。紋幕という言葉も初めて知りましたが、寺社の山門や社殿を飾る幕だそうで、紫色の地色に白抜きの紋のデザインが多いとありました。「つらね」という動詞から、本殿や拝殿のような間口の広い大きな建物に飾り幕が横長に渡されているのではないでしょうか。そして、天高く美しく晴れた秋の日に、境内のいたるところに菊のかぐわしい香りが満ち満ちて、作者はその香りを胸いっぱいに吸い、癒やしを受け取っているかもしれません。菊花は中国では漢方薬ですし、菊花茶というお茶も飲まれており、美しいだけでなく身も心もすっきりとさせる効能があるようです。