みのる:大阪市天王寺にある通称「愛染さん」です。浅草あたりと違ってどこか浪速的な雰囲気を醸しています。二人づれ…の措辞、正解はないのですが、ご利益は、縁結び・良縁成就・夫婦和合ということなので、私は仲の好い熟年夫婦かなと連想してみました。体裁もあまり構わないので互いに達磨さんのように着膨れて腕を組んでお参りしている姿を連想すると滑稽感もあります。

澄子:藍染さんとは大阪の愛染堂勝鬘院。夏の藍染祭りが有名らしいですが 季節は冬。 着膨れてお参りをするカップルの姿でしょうか…… 縁結び・良縁成就・商売繁盛等ご利益あついパワースポットとのことで 名作映画「愛染かつら」のモデルとなった縁結びの霊木が境内に鎮座されてるとか……「藍染さん」とさん付けで呼ばれ 関西でとても親しまれている様子が覗えます。お寺をさん付けで呼ぶところがなんともほっこり……卑近で庶民的な感じがします。

えいいち:愛染さん、という愛染堂勝鬘院というお寺があるのですね、知りませんでした。このお寺のご利益は縁結び・良縁成就らしいですが、この句の二人もそのような願いを込めて御詣に来た男女に見えます。季語の「着膨れ」ですが、厳しい寒さの中たくさん厚着して家を出てきたのでしょうから、この二人はこの寒さをも物ともしない意気込み(愛情)で結ばれているのだろうなあ、と作者は感じているのかもしれません。

かえる:愛染祭りが有名で、その時期は大層賑わうそうですが、着膨れてとあるので、作者が訪れたのは冬なのでしょう。人混みではなく、二人連れに着目されているので、行事の隙間のあまり参拝客の多くない時期なのではないかと思います。二人連れは縁結びで訪れた可愛らしいカップルなのか、はたまた良縁を願う仲良し女子どうしなのか。どちらにしてもなんだかとても楽しそう。のんびりした小春の日に、作者は二人連れの様子を優しく見守っているのでしょう。

むべ:愛染さんと呼ばれる寺院(康子さんの講評にあるとおり大阪の勝鬘院愛染堂のことかなと思いました。)の特徴がわかると、解釈がいろいろ深まりそうです。川口松太郎氏の代表作であり映画化もされた『愛染かつら』のモデルとなった縁結びの霊木「愛染かつら」も境内にあり、この木の前で愛を語り合った男女はどのような困難も乗り越え最後には結ばれるというジンクスがあるそうです。寒い冬の日、ダウンなどを着こんだ若い二人が、作者の前を歩いています。この道を歩いているということは、ははぁ、愛染さんへお参りだな、と作者は後ろから考えているのです。うまくいくといいね、と心の中で二人の背中に声を掛けながら。

康子:調べたところ…愛染堂勝鬘院「愛染さん」と呼ばれている寺院がありました。縁結びや良縁成就のご利益があるパワースポットとなっているようです。そして飲むと愛が叶うといわれる「愛染めの霊水」があり、若い女性に人気なんだそうです。この「二人連れ」は作者ご自身ではなく若いカップルを見ている状況として読んでみました。厚着をしてお参りするカップルを見てほのぼのとした気持ちになったのでしょう。「着膨れて」の季語により、厳しい寒さが想像でき、二人寄り添って山門を潜る姿が浮かびました。お揃いのマフラーでもしているのかしら、なんて思ってしまいました。写生句に徹すると読み手側で景を膨らませることが出来るということを学べました。