みのる:冬場の日射角度は約30度と低いので窓に置かれた寒卵に指す朝日は椅子に座った目線の高さで見えるのです。命が透けているという感覚を得たのでしょう。産みたて…なので買ってきた、お隣から貰った、というよりお庭で飼っている鶏のプレゼントのような気がする。朝食の卵かけご飯かになるのかも知れないですね。この卵から今日一日の元気を授かるのです。

澄子:厨の窓辺に無造作に置いた寒卵ではなく リビングの窓辺に大切にちょっと大袈裟かもしれませんが恭しく貴重な産みたての卵が一つだけ置かれた情景を想いました。卵を置いたその時さっと卵の色が変わり まるで内側から柔らかな電源が灯るかのように楕円の曲線に縁取られ淡いオレンジというかピンク色めいた色に変わったのではないでしょうか……命そのものに感動されてる作者の姿が浮かびました。

康子:調べたところ、寒さが厳しくなるにつれて鶏は水を飲む量が減り、栄養をしっかりと体内に蓄えるために飼料の摂取量が増える、それにより栄養価が高くなり卵黄の味わいが濃厚で美味しいものになるんだそうです。ご家族の為に栄養価の高い卵でお料理しようと手に取り、窓の日に当てたら透けるように美しかった。卵が新鮮なので殻のキメが細かくなめらかで光沢があるのでしょうね。「透きて」によりその美しさが伝わります。また「産み立て」の措辞の中に命を頂くことへの感謝が含まれている気がします。温かみを感じる御句でした

えいいち:腕に割った卵にキッチンの窓からの日があたり白身を透けて、まんまるぷっくりの輝くような立派な卵黄が見える・・これぞ、産み立て寒卵!と思わず呟いた作者の姿を思い浮かべしました。黄身も白身もとっぷりとした感じで栄養満点、とても美味しそうな卵です。

かえる:ほんのり桃色かかった桜色か白色の卵が、窓辺の陽の光で輪郭がぼやけ、まるで透けるように映った瞬間の美しさを詩的に捉えたのではないかと思いました。寒卵の栄養価より、産みたての儚さに着目されたのでしょうね。ロマンティックで素敵な御句です。余談ですが、私が時々訪ねる鶏舎の卵は新鮮で美味で栄養満点ですが実にワイルドです。赤い殻はカチカチで陽の光になど透けようもない。私の中で寒卵と言えば、ここの卵のイメージなので、寒卵をこんなに可憐な句に昇華される手腕に目から鱗が落ちる思いです。

むべ:寒卵は寒中に産卵された鶏卵のことで、滋養に富み日持ちもする点で、他の季節の鶏卵と違うようです。作者は産み立ての寒卵を得て、キッチンの窓辺にでも置いていたのでしょうか。ふと見ると太陽の光に殻が透けて美しい。ベジタリアンの方々はさておき、私たちは他の生き物のいのちをいただいて日々生かされていますが、美しい寒卵から、いのちをいただくこと・自身が生かされていることへの厳かな感謝の気持ちも作者は感じていたのではないでしょうか。