康子:「吉兆」は新年の季語で十日戎の小宝の別称。「小宝」は十日戎で売られた縁起物。「鯛」はその吉兆笹に束ねてあったもの。そして「福耳」は恵比寿様「えべっさん」。ようやく恵比寿様と鯛が一緒に吉兆笹に付いている写真を見つけました。「触れにけり」は鯛が恵比寿様の耳をくすぐるように見えたのでしょうか。縁起の良い文字がずらりと並び、なんて新年らしい句だろうと感じました。

澄子:「吉兆」が新年の季語。十日戎の福笹につける野や山や海の幸を象徴した飾りで小宝とも呼ばれるそうです。こちらの御句は私には 実感わかず故に意味も掴みづらかったです。福笹そのものを画像で確かめ……「吉兆」(小宝)自体はよく着物のモチーフに図案化されたりしてますので解りましたが はて福笹はどこに飾るのか?……お正月床の間に飾られた戎さんの置物の「福耳」に「吉兆」の飾りのひとつ「鯛」が触れている御床の情景を思いましたが、確かにせいじさん解釈のように 福笹を持ち帰る人の「福耳」に「吉兆の鯛」が触れているとする会釈の方が 奥行きがあると思いました。

せいじ:吉兆が新年の季語。吉兆は、十日戎で頒布される福笹につける縁起物のことで、銭袋、打出の小槌、あわびのし、大福帳、小判、米俵、鯛など、野、山、海それぞれの幸を象徴している。幸をもたらすであろう吉兆の鯛が、すでに幸を得ているような福耳の人に触れているのに目を付けたところが機知に富んでいて面白い。