あひる:冬芽が三冬の季語。冬芽ですからまだまだ小さく硬い芽なのでしょう。その奥に柔らかく瑞々しい命の動きが隠されているとしても、外側は小さな鎧のようです。北風に揺れる枝先の硬い鎧が窓をコツコツと叩いています。外に出るのは寒くて躊躇してしまいますが、作者の心は玻璃窓を通して冬芽と戯れているようです。

康子:「冬芽」が三冬の季語。調べてみたところ「新芽」とは違い、夏秋の間にでき越冬して春に花になる、とありました。「ノック」してるので風が吹いているのかもしれません。窓もガタガタしているのかもしれません。窓の外は寒い風が吹いているが、植物はその寒さに耐えて春には美しい花を咲かせてくれるんだなぁ、と温かい炬燵の中で外を見ているような情景が浮かびました。春を楽しみに待つ心情が伝わりました。

澄子:「冬芽」が三冬の季語。秋に用意された落葉樹の芽はそのまま冬を越します。「ノックしてをる」という擬人化がとても可愛らしく ガラス一枚隔てたそちら側は暖かそうですね~!どうかそちらに入れてくださいませんか と冬芽の硝子戸を叩く音に作者は思わずそう感じたのでしょうか……あるいはあらためて(冬来たりなば春遠からじ)そんなことも思われたのでしょうか……冬のやや風のある乾いた外気と室内の快適な暖かさを感じます。

むべ:「冬芽」が三冬の季語。作者は建物の中にいて、静かに過ごしていたところ、コツコツとガラス窓を叩くような音がしました。ふと見ると、樹木の枝先についた冬芽が、風で窓に当たる音でした。中七「ノックしてをる」は現在進行形または継続の完了形のような働きをし、作者が気づく前からノックされていて、作者がはっとしたことが想像できます。こんなところに冬芽があったのかという発見、またこんなに芽が膨らんで、春は着実に近づいているのだなという発見です。春を待つ喜びの感じられる句。

せいじ:冬芽が三冬の季語。冬を越すためにいまは固い鱗片でおおわれているけれども、春には確実に芽を出すものなので、冬芽には春が隠されている。隠されているだけで春そのものである冬芽が、「もう少しの辛抱ですよ、この冬の寒さを一緒に乗り越えましょう」と、外から玻璃窓をノックして、部屋に籠る作者を励ましているかのようである。

かえる:冬芽が三冬の季語です。窓をコツコツ言う音を訝しみ、覗いてみると、木枯らしに揺さぶられた木の芽がまるで意思を持っているかのように窓をそっと叩いています。寒いから中に入れてよと言わんばかりに。作者は気の毒に思いながらも地植えの木を中に入れてやることはできず、早く春よ来いと願っているのではないでしょうか。玻璃窓の響きの美しさが、室内の柔らかい光や温度を連想させ、冬芽の置かれた厳しい環境がより際立っているように感じました。

えいいち:冬芽が三冬の季語。冬の低い日差しをキラキラと反射するガラス窓をちょっと伸びた冬芽の枝がノックするように触れている情景が浮かびます。室内から見ればガラスの光り具合が暖かい春の日のように見えます。そして外の冬芽はじっと寒さに耐えながらも春を恋しがり思わず「春はまだですか」とその光る窓をノックしているのではないでしょうか。