澄子:「霜」が三冬の季語。作者の視点は一瞬のうちに停車場全景から今まさに出庫する電車そして霜が降りてキラキラと美しいレールにフォーカスされたのではないでしょうか…… 映画のワンシーンのようでもあり 早朝の薄暗さ、静けさ、信号の点滅光、交錯するレールの重なり、レールの軋む音まで感じました。

康子:線路の霜に焦点を当てていることに感服しました。霜の白さや線路の奥行き、朝の寒い空気や薄暗い空、出庫する電車の動きや音、車庫の大きな風景、まだ人の少ないホーム、見つめる作者の白い息。たった十七音なのに大きな絵画や動画を観ているように感じました。三冬の季語「霜」により一層の寒さを感じます。

かえる:霜が三冬の季語です。霜に覆われた線路から、雪国ではなく都会の始発電車を思い浮かべました。運転手が出庫のためにライトをつけると、真っ直ぐ続く線路にびっしりと霜が降りているのを目にします。日中はどんなに寒くとも過密ダイヤで霜の固まる間もありません。霜の線路を目にすることができるのは、始発電車だけ。その運転手の気持ちになって詠まれた句なのではないかと思いました。

せいじ:霜が三冬の季語。作者は出庫する電車を見守っている。電車は車庫に停めているので霜はついていない。霜は線路だけについている。近づいてくる電車の灯りや外灯に照らされて「霜の線路」がきらきらと煌めき、薄暗がりの中、線路の幾何学的な形が鮮やかに浮かび上がる。こんな美しい風景が見られるのは、朝早くから働いている人の特権であろう。「霜の線路」という言い方がうまいと思った。

あひる:霜が三冬の季語。線路に霜が降りている様子や出庫する電車を見たことがありません。朝早く、辺りはまだ薄暗いのではないでしょうか。乗客もまだ居ない頃、鉄道会社の職員だけが霜の降りた白い線路を白い息を吐きながら見ているのでしょう。車庫からゆっくりと電車が動き始めます。車輪が霜を踏みながらガタンゴトンと進み出て、電車の忙しい一日がもうすぐ始まるのだと思います。

えいいち:霜が三冬の季語。線路に霜がついている、その中を一番電車が出庫していく情景の句ですが、線路は金属のなので敏感に冬の寒さを受けて辺りで一番に霜がつくのでしょう。出庫するのは朝の一番電車、つい先日まで黒光していた線路が今日は霜が着き薄明かりに白く光っていて綺麗です、冬がやってきたなあと一番電車を見送っている作者を想像しました。

むべ:「霜」が三冬の季語。作者は車庫の見える早朝のホームに立っているのでしょうか。ちょうど車庫からゆっくり電車が出てくるところで、昨夜はよく晴れて放射冷却し、今朝は線路に霜がびっしりと付いているのが見えます。金属製の線路は熱伝導率が高く霜が付きやすいのでしょう。線路際の地面も霜を結んで白く見えます。冷えた空気をともなった、冬の朝らしい光景です。