澄子:「竜の玉」が三冬の季語。手入れの行き届いた禅寺あるいは禅寺宿坊の静謐な御庭を思い浮かべました。「喝」と一文字刻まれた大きな自然岩の石碑が据えられその周りを冬でも青々とした竜の鬚が幾重も取り囲み青き玉を所々に溢しているような……「喝」は励ましの意味もあるそうです。

むべ:「竜の玉」が三冬の季語。磐石は大きな石または岩のことを指すそうです。禅宗のお寺の山門や石庭を想像しました。大きな天然石に「喝」の一字が彫られていたのでしょうか。竜の髭は日陰を好む植物ですから、作者が石の裏側に回って瑠璃色の実を発見したのかもしれません。それは冬ざれた景色の中、まるで宝物を偶然見つけたような驚きと喜びだったことでしょう。

あひる:竜の玉が三冬の季語。盤石に喝と彫られた一文字があるとすれば、禅寺が思い浮かびます。座禅をする時に「喝!」と肩を叩かれます。冬の寺庭の盤石は冷たく、喝の一文字は見る人の気持ちを一瞬に引き締めることでしょう。その盤石の立つ所には竜の玉が清らかに光っている。深い瑠璃色の実が厳しい文字と重々しい盤石に、ふっと和らぎを与えているようです。

せいじ:竜の玉が三冬の季語。ネットで調べてみると、兵庫県伊丹市に荒木村重の菩提を弔う荒村寺(こうそんじ)という禅寺があり、その境内に「喝」の一文字を彫り込んだ石碑があった。2メートルほどの高さの球状の石で、真ん中の大きな喝の字はうっすらと朱色を帯びているように見える。もともとは朱が入れられていたのかもしれない。裾回りは低い茂みになっており、これが竜の髯であれば、冬になると瑠璃色の宝石のような実を付けることだろう。この寺の石碑に限る必要はないが、武士や禅僧を思わせるような武骨な大岩のそばにあって、瑠璃色に輝く小さな竜の玉がより美しく感じられる。

えいいち:竜の玉が三冬の季語。喝と彫られた大きな岩の碑の傍に龍の髭の実が成っていた情景の句だと思います。喝の文字の碑と竜の玉の自然の景色が作者の目には絶妙な取り合わせとなって感慨を深めているのだと思います。龍の持つ玉は願いが叶う玉とされているようですが、それ見て安堵する安易な人(私)の心に喝のとひとこと地の神が一喝を入れたのでしょう。

かえる:竜の玉が三冬の季語です。山寺でしょうか。ふうふう言いながら長い石段を登り切ると、奥に大きな巌があるのが目に入ります。疲れた、疲れたと弱音を吐きながら巌をぐるりと回ると、そこに刻まれているのは思いがけず[喝]の文字。星のように美しい竜の玉が彩る巌に、文句ばかり言わない!と叱られたような気持ちになり、思わず背筋を伸ばす。そんな光景が浮かびました。喝の力強さと、竜の玉の儚げな美しさの対比が面白く、想像力をかき立てられました。