せいじ:鷲が三冬の季語。「檻の鷲」は動物園の鷲であろう。世界の鷲を展示しているのであれば、例えばアメリカ合衆国の国鳥である白頭鷲かもしれない。檻の中の高い木の枝にとまり、獲物を狙うような鋭い目をして、斜め上方をうかがっている鷲を、ローアングルからとらえた写真を見るようである。飼育されていてもなお野性を失っていない鷲の雄姿に感動する。

澄子:鷹が三冬の季語。またしても鋭目という言葉を初めて識りました。囚われてなお失われることなき野生の気高さ、尊厳に作者は驚きと敬意を表しているのではないでしょうか……中七の(鋭目ぞ)の詠嘆が心に刺さります。ビー玉のように美しく透き通った鷹の目が浮かびました。

かえる:鷲が三冬の季語です。動物園の檻の中から冷たい空を仰ぐ鷲。捕まえられたのはとうの昔で、もう何年も狩りはしていない。餌を与えられることにも、退屈だけど安全な檻の中で呑気に過ごすことにも慣れたけれど、自分の翼で自由自在に飛ぶ醍醐味も、捕らえた餌の鼓動や血の味も決して忘れてはいない。いつかあの空に戻ると、チャンスを淡々と伺っている。作者はそんな鷲を見て自分を再び奮い立たせているのではないかと感じました。鋭目という言葉に、強い意志を感じます。

あひる:鷲が三冬の季語。檻に入れられた鷲が失うことのない野性、それが鋭目というひと言に現れています。大空をぼんやりと見上げているのではありません。黄色と黒の鋭い目でうかがっている、そこに悲しさを感じます。寒々とした大空が雪山の上に青く広がっているような気がします。

康子:鷲が三冬の季語。今にも檻から大空に飛び出していきそうな鷲の勢いを感じます。寒い冬の空を本来は悠々と飛んでいるはずの鷲。「大空をうかがふ」により絶望感かと思いきや「鋭目ぞ」の措辞により力強い野生の生命力を感じます。背景に大空、目の前には人間の作った檻、その中には野生の強さを感じる鋭目。スケールの大きな野生の生きる力を感じる句だと感じました。大型で強い「鷲」が効果的にイメージを膨らませていると思いました。

えいいち:鷲が三冬の季語。眼光鋭く大空を仰ぎ空の覇者としての誇りを捨てない鳥獣園の檻の中の鷲のすがたを想像しました。この鷲がもしここに居なかったら悠々自適に大空を飛んでいたのかもしれないと思うと少し寂しい気持ちになります。鋭い目で見ている視線と空の冷たさを感じます。

むべ:「鷲」が三冬の季語。上五、中七で眼光鋭く大空をうかがっているのは誰だろうと思いつつ、下五「檻の鷲」で軽い衝撃を受けます。大空をフィールドに悠々と羽ばたくはずの鷲が、檻に閉じ込められているのです。自由を奪われた鷲の姿に作者は不条理を感じつつも、「鋭目ぞ」と係り結びの強意にて感嘆しています。その眼に野性の輝きを見て取り、勇気をもらったような気がします。