あひる:歳の市が仲冬の季語。作者は歳用意のため人ごみの歳の市へ出掛けたようです。すると、ある売り場で人垣が出来ていて、その人垣の原因が何であるかが分からない。何が何でも確かめたくなった作者は必死で爪立ちして、何を売っているのかと覗き込みます。さて、人垣の原因を確かめた作者は、また楽しげに何気ない顔をして歩き始めたことでしょう。師走の空気感、わくわく感が伝わってきました。

えいいち:年の市が冬の季語です。年末のにぎわう年の市、東京で言うと年末のアメ横に買い物に行ったような感じなのかと想像しました。威勢の良いおじさんのガラガラ声の売り込みの掛け声が聞こえるようです。でも人だかりで商品もよく見えません。ぴょんと爪先立って覗いている様子がとてもリアルです。正月が待ち遠しく楽しみしている年末独特の雰囲気を感じますが今となっては懐かしい思いも湧いてきました。

むべ:「年の市」が仲冬の季語。コロナ禍に突入し、年末に人出の多いところへ買い物に行く機会を失い数年になりますが、新年を迎えるためのさまざま品を売っているマーケットは、きっと活気に満ちていることでしょう。歩いていると何やら人だかりがあり、作者もどれどれと覗こうとするのですが、見えないのでつま先立ちになった…という状況かなと思いました。行く年を走り切ろうとする売り手と、来る年の準備で慌ただしい買い手と。賑わいの中に人々の疲れや期待、喜怒哀楽も垣間見えます。

せいじ:年の市が仲冬の季語。注連縄などの正月用品を買いに年の市にでかけてみた。何やら人垣ができている。人垣の後ろから爪先立ちをしてのぞき込んでいる人たちがいる。何を売っているんだろうと、自分も真似をして同じようにする。そんな情景であろう。年の市の賑わいが活写されている。「爪立ちのぞく」にリアリティーがある。