あひる:山にもいろいろな姿がありますが、林業を生業とする地域では、山全体が植樹された杉に覆われています。杉はまっすぐな円錐状の樹形ですので、蒼天に針のようにつんつんと尖っています。その杉が次第にくすんだ赤茶けた色となっていくのが秋です。空気が澄んだ爽やかな秋空の下、杉山では山の手入れや伐採が忙しく行われてもいるのです。

えいいち:杉の秋を秋の季語と考えました。杉の木は日本では一番大きく背が高くなり最も長寿だそうです。そんな樹木の王様のような尖がり天に伸びる地上の大杉と高く澄んだ天の蒼空の二つの姿が重なり合いが秋という季節を強く感じさせてくれます。

せいじ:秋が三秋の季語。杉の秋とはどのような状況を言っているのだろうか。調べてみると、杉は常緑樹であるが、秋から冬にかけては、葉緑素の量が減少し、カロチノイドの量が相対的に多くなるため、葉っぱが赤褐色になるとのことである。春になって気温が上昇すると緑に回復するらしい。知らなかったが、確かに、晩秋になると杉は赤っぽくなる。いまは秋。空にも杉にも秋がどっかりと居座っている。澄み切った青い空と、赤っぽくなった杉の山。秋という季節に対する作者のしみじみとした思いを感じることができる。なお、「尖る」が的確な写生であると思った。山全体が杉でおおわれているので、山が尖って見えるのである。

えいじ:「秋」は、三秋の季語です。晴れ渡った空を鋭くつきあげるような山の姿と、茶色く秋めいてきた杉の大木が、重なって見えてきます。その杉の大木は、山に祀られている御神木だと思います。空も山も樹も、秋という季節の深まりに、その姿をより一層際立たせているように感じました。宜しくお願いいたします。

むべ:「杉の秋」が三秋「秋」の子季語の一種ではないでしょうか。(島の秋、里の秋、寺の秋など場所に付くもの、窓の秋、人の秋など人・物に付くもの、かなり幅広くあるようです。)真っ青な秋の高い空に向かって、山頂の尖った山がそそり立っている絵を想像しました。杉は常緑樹のイメージが強いですが、関東では植林された杉山は晩秋から冬にかけ杉の葉が褐色になり、枝ごと登山道に落ちていることもあります。また、杉の実も11月くらいに熟すと茶色になり、遠くから見ていても山全体がなんとなくくすんだ感じの色合いになります。(もしかしたら表杉、裏杉で異なるかもしれません。)天は透明感のあるブルー、地は落ち着いたアースカラーという色の対比が、秋の到来を感じさせます。