あひる:銀杏散るが晩秋の季語。銀杏の葉が引力で地に落ちる、それだけだと普通のことですが、それがシスターのベールに触れたばかりに物語が生まれたようです。シスターの表情やそれを見ている作者の表情、そして銀杏の色とベールの黒、秋の陽の色も目に浮かびます。少しひんやりとした明るい日だったことでしょう。

むべ:「銀杏散る」が晩秋の季語。銀杏の木の下を修道会のシスターに案内されて歩いている光景が浮かびました。散った銀杏の葉がシスターのベールに触れてから地面に落ちていった、その一瞬を切り取ったのかなと思います。銀杏の木が「いらっしゃい」と言ったのか、葉が「さようなら」と言ったのか…聖なる空間と時間を感じる句です。

せいじ:銀杏散るが晩秋の季語。修道院の森をシスターに案内してもらっているときに、森の銀杏の金色の葉が風に散って、その一枚か二枚が、シスターの白色のベールに触れて落ちた、というような情景を想像した。銀杏落葉がまるでシスターに心を寄せているかのようである。旧約聖書の雅歌を連想した。

えいいち:「銀杏散る」が晩秋の季語。私には中七下五が難解でした。シスターの頭の位置に銀杏の枝があってそれに触れて葉が落ちる、なんて事はあるのかなあ・・とはじめは考えていました。しかしゆっくり落ち着いて想像膨らますと晩秋の銀杏の葉がはらはらと落葉する銀杏並木の下を歩くシスターが居る光景が浮かび、そして黄色い扇型の銀杏の葉がシスターのベールに触れた瞬間それが女性の黒髪を彩どる髪飾に見えたのです。美しい、と感じた一瞬を切り取った句だと思いました。