あひる:蔦紅葉が秋の季語。岩頭という措辞により岩の大きさを想像できます。攀じるという措辞により蔓がしがみつくようにくねりながら伸びている様子が分かります。一縷という措辞により一筋の蔦が懸命に生きていることを感じます。少ない言葉で豊かに表現できるのだと思いました。

せいじ:蔦紅葉が三秋の季語。岩の上までのぼろうとして岩にすがりついている、か細い蔦紅葉の(懸命さを思わせるような)姿が「攀じる」によく表されていると思った。無機質な岩盤と燃えるような蔦紅葉の色の対比も美しい。歳時記には「落葉松を駈けのぼる火の蔦一縷」「枯れてなほ岩をはなさず蔦一縷」などの句が散見されるが、蔦と一縷の組合せはいつか使ってみたい。

えいいち:「蔦紅葉」が秋の季語。岩の突端へ縋りつくように伸びた1本の蔦紅葉が色づいて綺麗です。一縷、攀じる、という措辞から紅葉の美しくありながら秋の哀愁の漂いを深めている様子を感じます。

むべ:「蔦紅葉」が晩秋の季語。美しい秋の岩場を想像しました。スポーツクライミングが東京オリンピック正式種目として認められ、小学生の習い事にまでなっている昨今ですが、ここでは蔦がクライマーのように岩のてっぺんに向かって登攀しています。一縷とありますので、岩場を広く覆っているのではなく、一本が伸びていて、岩の黒っぽい色とのコントラストも美しいことでしょう。私なら「這う」という動詞しか浮かびませんが、「攀じる」が秀逸です。秋の岩場を登りたくなりますね。