あひる:天高しが秋の季語。どこまでも高い秋の空へ、見事な鉾杉がすっくと聳え立っています。鎬を削るのですから一本ではなく、かと言って森となっているのでもなく、数本の鉾杉が高さを競い合っているような風景を思います。それぞれの杉の高みには、爽やかな秋風が通っていることでしょう。

えいいち:「天高し」が秋の季語。鉾杉が秋空の下でが高さを競い合っている、という句ですが、この句は鉾のような杉の林がその高さ、つまりは鉾としての強さを競い合っていると読み取りました。が、しかしその上方にはさらに秋の高く青い空がある、という人の思惑よりもさらに高いところに自然の力や美しさがあるのだ、ということなのかと思いました。

せいじ:天高しが三秋の季語。杉美林を目に浮かべた。下から見上げると、真っ直ぐに伸びた背の高い杉たちが、あたかも天をゴールにして競い合って伸びているように見える。「鎬を削る」に躍動感があり、静止画ではなく動画を見ているようだ。蛇足だが、世界の子どもたちも、この鉾杉のように、ともに天をめざして真っ直ぐに成長してほしいと願う。

えいじ:「天高し」は、三秋の季語です。真っ直ぐに伸びた杉が、せめぎ合うように林立し、晴れ渡った秋空に立ち上がっている情景を詠んだ句です。辞書に「鉾杉」とは、「矛の形のように、まっすぐ伸びた杉」とありました。それらの秋空に向けて、高さを競い合うさまを「鎬を削る」とするのは、唯一無二の表現だと感じました。よろしくお願いいたします。

むべ:「天高し」が三秋「秋高し」の子季語。鉾は古代では戦いに、後代祭事に用いられた鋒鋭い武器の一種です。鎬とは構造的に刃を支え丈夫にする部分で、そこすら削られるほどの激しい熱い戦いのことを「鎬を削る」と表現するようです。武器を彷彿とさせる樹高のある杉の木が、天に向かってまっすぐに、天を突くかのように挑んで立っている…その勇姿に作者は圧倒されたのではないでしょうか。杉の木にフォーカスしつつも、季語の力で澄んだ空気、晴れ渡る空も感じられます。