えいじ:「かなかな」は、初秋の季語です。仕事を終えて、林業作業の皆さんが、かなかなのあたかも輪唱するかのような鳴き声のなかを、山から下りてくる場面を詠んだ句です。中七の「夕かなかなかの」は、時間と季語を端的に融合させる巧みな表現だと思います。この句は、体を使って労働することへの慰労や賛美のように感じました。よろしくお願いいたします。

むべ:「かなかな」が初秋の季語。この句を味わいながら浮かんだ曲が「遠き山に日は落ちて」でした。杣ですから、冒険や趣味の山ではなく林業の山です。美しい蜩の声に包まれながら、一日のわざを終え、心地よい疲れとともに下山している杣人を想像しました。

せいじ:かなかなが初秋の季語。かなかなの歌声の美しさにうっとりしながら家に帰っていく杣人の姿が目に浮かぶ。「しぐれ急」の先の句は、かなかなが家路を急かしているといった風情であるが、「輪唱裡」のこの句は、美しい歌を聞きながらゆっくりと家に帰っているという印象を受ける。ともに下五の言葉の選択がうまい。

あひる:かなかなが初秋の季語。「杣人に夕かなかなのしぐれ急」を思い出しました。似たような情景ですが、輪唱裡の方はどこか楽しげです。かなかなの美しい輪唱を聴きながら、仕事を終えて帰る杣人。心安らぐ本当の贅沢がここにあるような気がしました。

えいいち:「かなかな」が初秋の季語。夕方杣人たちは仕事を終えかなかな蝉の鳴く中を帰ってきます。輪唱裡という措辞からかなかなの涼しげで綺麗な鳴き声が杣人の山を下りてくるのを追うように次々と輪唱の如く聞こえ、夕日の木漏れ日を受けた美しい森林の小径を思い浮かべました。