素秀:雨の気配はあってもまだ降りだしてはいないなか、群れ咲く牡丹の艶もしっとりとしてきたようです。青空に咲く牡丹も良いけれど雨待ちの牡丹も風情が有って良いなと思う作者です。牡丹百、雨気の使い方が大いに参考になります。

あひる:四月から五月に大輪の花を咲かせる牡丹には東洋的な華やかさを感じます。その牡丹の園に雨の気配が迫っています。雨が降れば大きな花は更に重たく俯いて、散り落ちる花びらもあることでしょう。作者の心は微かな憂いをおび、牡丹の姿に感情を重ね合わせているのではないでしょうか。

むべ:「牡丹」が初夏の季語。空は薄墨色、大気は湿り気を帯び、雨の降りそうな気配です。牡丹園の牡丹たちもなんだか憂いを含んだ姿ですが、実は燦々の太陽光より、アンニュイな曇り空のほうがお似合いなのかもしれません。牡丹園の奥から楊貴妃が現れそうな、雰囲気のある一句だと思いました。

せいじ:牡丹が初夏の季語。百とあるから牡丹園であろう。花の王と呼ばれる牡丹、色とりどりの大きな花が咲いている。雨の降りそうな気配の中で、みずみずしい牡丹の花がさらに艶っぽく見える。百の牡丹の一つ一つが、それぞれに憂いを帯びた女人のようだと感じたのであろう。