素秀:噴水を囲うように並んだベンチに作者はいるようです。突風に乱れた噴水に驚く鳩の一瞬を切り取っています。鳩は飛び去った訳ではなく少し飛び上がってまた戻ったのでしょう。噴水の乱れが無くなればまた元の調和した状態になるところまで想像できます。

むべ:「噴水」が三夏の季語。噴水と鳩との取り合わせで、作者はどこか大きな公園のような場所にいることが推測できます。噴水は水をいろいろな造形にする仕掛けですから、止まったり、また吹き上げたりしたときに、驚いて地面の鳩が飛び立ったのでしょう。下五の「翔たせけり」の詠嘆に詩情を感じます。

あひる:噴水が夏の季語。ふっと風が吹いたのか水圧が変わったのか、噴水に思わぬ動きがあったようです。傍でのんびり何かを啄んでいた鳩が、はっと飛び立ちます。身を守る本能です。作者は、平凡な風景の中の、ちょっとした変化を見逃さず楽しんでいるようです。

せいじ:噴水が三夏の季語。涼しげな噴水を背景にして、周りの変化に敏感な鳩の動きを瞬間写生している。噴水に鳩を翔たせる意図があるわけではないが、視点を変えれば、かのようだということであろう。

豊実:鳩も噴水で涼んでいたのでしょう。しかし、突風で飛び散った噴水の水が鳩を驚かしました。