あひる:鳩時計というユーモラスな人工物と、月下美人という高貴な自然物の取合わせが愉快です。「…に鳴きにけり」で二つのものの間に関係が生まれ、夏の夜の図らずも頰笑ましい情景が見えるようです。

せいじ:月下美人が晩夏の季語。月下美人は夜7時、8時ごろから咲き始め、朝までにしぼむ。鳩時計は、時刻が来ると、作り物の鳩が出てきて、その時の数だけ鳴くようにできている。鳩時計が月下美人に時を知らせているかのように、時を媒介にして、両者を結び付けているところが面白いと思った。

むべ:「月下美人」が晩夏の季語。夏の夜、月下美人が大きく白い花を開きました。女王然とした花を眺めていると、掛け時計から正時を知らす鳩が飛び出し鳴きました。まるで、女王の戴冠式にラッパを吹き鳴らすかのように……偶然の出来事を見事に一句に仕立て、そこに物語が生まれたように思いました。