むべ:「バラ」が初夏の季語。庭仕事の多い作者の日常生活が察せられます。季語が「薔薇」でなく「バラ」なのはなぜか、また下五が「覚えけり」と詠嘆になっているのはどのような心持ちか、想像が膨らみます。「そうび」と発音されないよう、リズムを大切にした結果でしょうか?「覚えけり」はもしかしたら周囲から「そのけが、どうしたの?」と聞かれて、バラとの格闘が話題になったのでしょうか?季語が遠くにあって眺めるものでなく、人の営みの中にあることを感じました。

あひる:ゴールデンウィークの頃になると四季咲きのバラでも見違えるように咲き誇ります。 バラの剪定は冬と夏の年二度のようですから、初夏の艶やかなバラの花を愛でながら以前剪定した時の古傷を見ているのでしょう。綺麗なバラには棘がある、用心用心と苦笑いの気持ちです。

素秀:気が付いたら手に傷があった。これはあのバラの棘に違いない。バラの剪定をバラとの戦いのように言い面白がっているようです。

せいじ:バラが初夏の季語。この傷はあの時の傷だと思い当たったのであるが、バラの花を切ろうとしてバラのトゲの反撃を受けたかのように、「手傷」という言葉を使っているところが面白いと思った。バラが片仮名なのは、園芸品種のバラではなく、野生のバラあるいはノイバラだからかもしれない。