むべ:「蛍」が仲夏の季語。関東では曲線を描くように飛ぶゲンジボタルがメジャーですが、この句では杉の木が生えている=比較的標高の高いところで雫が落ちるような直線的な飛び方なので、もしかヒメボタルなのかもしれません。暗い中で、杉の大木から金色の雫が落ちる様はなんと幻想的なのでしょう。夏の夜の一期一会の出会いの貴さを感じました。

素秀:杉の秀の雫のように落ちる蛍。乱舞する蛍が杉から落ちる雫とともに落ちるように見えているようです。雨上がりの夕暮れしんしんと静かな木立かと思います。

あひる:夏の夜、杉の木のシルエットを背景にふわりふわりと蛍が飛んでいます。すると一つ、蛍の光が雫のようにまっすぐ落ちて消えたのでしょう。あれ?と思います。ほんとに蛍なの?と。ちょっとした出来事が、句にすることで忘れ難い出来事になると思いました。

せいじ:蛍が仲夏の季語。吉野に吟旅に行ったときのことを思い出した。夜、蛍を見に行ったが、蛍は川辺の比較的低い木や草の周りを光りながら飛び交っていた。高い杉の木の上の方まで飛んでいく蛍はめったにいないと思うので、杉の秀枝から下降する蛍の光を見て驚いたのであろう。「蛍あり」に驚きが表されていると思った。雫に譬えているので、雨上がりなのかもしれない。

豊実:乱舞する蛍の光を見ていると何故か雫のように落ちていく光があった。それは、杉の秀をいそいそと歩いている蛍だった。