素秀:作者は燕の巣を下から見ているのでしょうか。成長してもう雛とは言えない子燕の嘴は下からでも覗けるようです。楽団のトランペットが並ぶようなさまで、もちろん鳴き声もかなり大きいのだと思わせます。

あひる:子どもの頃実家に燕の巣が幾つかあり、思い出も沢山です。親燕が帰ってくると、巣の中にずらりとならんだ子燕の黄色い嘴が、一斉に顔より大きく開きます。嘴は精一杯に突き出され、ピイチクパアチクと、楽隊の喇叭のようです。親が運んでくる餌は一匹の虫ですから貰えるのも一羽、実はこれは壮絶な生存競争だと思います。

せいじ:子燕が三夏の季語。生まれたばかりの燕の子が黄色い嘴を大きく開いて親に餌をねだっている。顔中を口にした姿は、色といい形といい、確かに喇叭に似ている。愛らしい光景である。