よし子:寒い小雪のちらつく街角道化師は、見物の人達に笑ってもらいたくて、手や足をくねらせてゐるそのまつ毛にそっと風花が付いたそれは涙のように見えた。

素秀:道化師はクラウンともピエロとも言われますが、おどけて人に笑われる者の事です。ピエロの化粧は泣き顔をごまかすためとも言われ頬の星の涙のマークとも。最近では映画バットマンのジョーカーもそうです。哀しみを隠しす長い睫毛に取りついた風花も憐れをさそうようです。

せいじ:風花が冬の季語。風花の舞う街頭で道化師が笑いを振り撒いている。道化師は、大道芸人の一員だろうか、サーカスなどの宣伝をしているのだろうか。普通ならあまり目を向けることのない道化師の睫毛だが、風花が睫毛に引っ掛かるのを見て、それがすごく長い付け睫毛であることにはじめて気が付いたのであろう。新しい発見は風花のおかげである。

あひる:風花が冬の季語。大阪城公園で人垣が出来、道化師が大道芸をしているのを見たことがあります。この日は明るい冬の日で道化師はジャグリングを始めたのかも知れません。そこへ風花が幻のように舞ってきて、道化師の長い付け睫毛に引っ掛ったのでしょう。厚化粧で本当の表情が分からない道化師ですが、風花に心を動かさない筈がありません。作者はその道化師の化粧の奥の感情に心を留めたのではないでしょうか。