むべ:「春愁」が季語。窓際族とはなんと切なく響く日本語でしょうか。英語圏にはぴったりの対訳はないのではと思います。そろそろ定時、さて帰り支度でもしようか……という社内ではあまり目立たない社員さん。でも作者はそんな目立たぬ存在のふとした視線や態度に何かを感じ取ったのでしょう。「夕ごころ」という措辞が貼られたレッテルを優しくはがしていくようです。

豊実:会社で毎日何となく仕事をして今日も夕方になった。気がつけば春ももう半ば。このままでいいんだろうか。

素秀:出世コースを外れたり責任のある仕事を任せて貰えない社員が窓際族などと言われるのでしょうが、年功序列で終身雇用の時代ならではのように思います。春愁を感じるなら辞めてしまえば良いのにと思うのは厳しいでしょうか。

せいじ:春愁が春の季語。定時などなきがごとくに忙しく立ち働いている社員をよそ目に、時間つぶしに読んでいた新聞などを片付けて帰宅準備をしている社員。窓際族と揶揄されるそのような社員の気持ちを、作者は、春愁の季語に託して、忖度している。切なさが「夕ごころ」に凝縮されている。