うつぎ:卒業式で涙が出るのは合唱の時ではないでしょうか。その歌声に作者もほろっときたのでしょう。涙に託されている純真な心をいつまでも持っていて欲しいと。

素秀:小学生の頃は生意気で捻くれ坊主だったので早く中学校に行きたくての気持ちが強かったのですが、式が進むにつれて先生方の涙を見たりするとこちらも何だか泣きそうな気分になったものです。無垢では無かったものの今だに覚えているのですから、人生の最初の区切りとして忘れられないものなっています。

よう子:卒業式で「蛍の光」を歌うときには堰を切ったように涙が出ます。頑張った自分への安堵や友との別れる寂しさなどの感慨に浸る無垢の涙です。しかし「無垢の涙をな忘れそ」と言うことによって純粋で無垢な気持ちを持ち続ける難しさを伝えています。卒業して社会に出てゆく子供たちに幸あれと作者は祈っているのです。

せいじ:卒業が春の季語。中学生や高校生の涙は無垢とは言えないと思うので、これは小学校の卒業式ではないかと推測する。小学生(自分の子どもかもしれない)が実際に流している涙を見て、自分も小学生のころは無垢だったなあ、この子たちの涙もきっと無垢だろうなあ、としみじみと思う。そして、この無垢なこころをずっと持ち続けてほしいと、小学生に対して言っているのではなく、あのころの無垢なこころを忘れまじと、自省の念を込めて、自分に対して言っているのではないだろうか。

むべ:「卒業」が仲春の季語。学び舎で過ごした日々を思い出し、また恩師や学友との別れを予感し、さまざまな思いが交錯する卒業。泣いている学生への眼差しが優しく、「な忘れそ」の下五に社会の荒波に船出していくことへの応援も感じました。