むべ:「書初め」が新年の季語。文机に向かい、あるいは床で?墨痕鮮やかに「うゐのおくやまけふこえて」と書いた作者の姿が浮かびました。新年にあたって何かを決意したのかもしれません。

うつぎ:最初は仮名で手遊びのように軽い気持ちで書いていたような気がする。書きながら一番重要な有為の奥山のこの一節を書初めとしようとなったのではないだろうか。歌そのままを句にしリズミカルで奥深く心に惹かれます。

素秀:いろは歌のこの一節が書初めの心境にぴったりだったのでしょう。この句をそのまま書いたとも考えられます。

あひる:素十さんは客観写生を旨としていると思いきや、五七五を自由自在に楽しんでいるようです。書道の世界の奥深い山で何か会得し、今日踏み越えたのではないでしょうか。越えたと解釈すると、明るい気分を感じます。

せいじ:書初めが新年の季語。いろは歌のこの一節は、無常の現世を生きるとは道のない深い山を進むようなものだという意味らしい。何事も迷いながら一歩一歩進んで行くしかない。作者は、何かの悩みを吹っ切るかのようにして書初めに臨んだのではないだろうか。書初めであるから、文字の手本になっているいろは歌になぞらえたのであろう。

豊実:書初めで何を書くかは一つのテーマだと思います。有為転変の迷いの奥山を今乗り越えて、という新年の決意をしたのでしょう。