うつぎ:今回の旅行では南十字星を観ることも期待していた一つだったのだろう。ブラジルの月の空に見ることが叶った喜びが「南に南十字星」として表れているように思う。

素秀:南十字星、サザンクロスのイメージは南の空に大きく十字を描く星座ですが、実際は見つけるのも難しい小さい物だとか。それでも南の極星の役割をする重要なものです。それゆえに南に南十字星と強調しているのかと思います。

せいじ:南十字星=南十字座は全星座の中で最も小さく、明るさも揃っていないので、見つけにくい星座らしい。サンパウロからは南の低い位置に見えることが多いとのこと。南半球に来ているので是非とも見たいと思っていた南十字星である。月も出ているよく晴れた夜、南の低い空にやっと探し当てた。その喜びが「南に南十字星」という表現になったのではなかろうか。

むべ:「月」が秋の季語。「月の空」という上五がすごいです。「空に月」だと凡庸に過ぎるのですが「月の空」ですか……そしてブラジルの国旗にも描かれている南十字星が下五にあり、日本=月、ブラジル=南十字星という対比も感じました。赤道をまたいでの旅、異国情緒を感じる一句と思いました。

あひる:月が秋の季語。馴染み深い月の照る夜空、けれどもその同じ空に見たことのない南十字星が出ています。南半球のこの地では当たり前の夜空ですが、「南に」と被せるように言うことで、遠く離れた地に居ることの驚きと、しみじみとした感慨が伝わります。

豊実:ブラジルで月を眺めている。また、その夜空で南半球でしか見えない南十字星を見つけた。日本から遙々ここまでやってきたことを感じながら、やはりここでも月は美しいと思う。